映画『マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)』レビュー│親と子は「別個体」!
2025年10月7日●洋画(主にアメリカ),マイヤーウィッツ家の人々

こんばんは!lenoreです。
今回は、ノア・バームバック監督の映画『マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)』について書こうと思います。
監督の作品は今までに『フランシス・ハ』『マリッジ・ストーリー』『ヤング・アダルト・ニューヨーク』『イカとクジラ』と観てきて、
「この方の作品、結構好きなタイプかも」と思っていた私。
今回の映画もかなり好きなタイプでした!
そのまま、描く。
「どうしてこの監督の作品にこんなにも惹きつけられるんだろう?」と考えてみたところ、
「人間を そのまま 描く手法が素晴らしいから」というのが大きいかもと感じました。
そのまま というのはどういうことかというと…
クッッッッソ細かい人間の心の動きや、対人関係のチッッッッサイあるあるをそのまま描く
=「映画の中の人の話でしょ?」とフィクションとしてスルー出来ないほどリアルガチ
この表現が一番ぴったりかなと思います。
この そのままなシーン に遭遇すると、フィクションを観ているはずなのに、
「わかるー!このあるある。なんでそこをもっとこうさぁ…あ…これ映画だった」と
現実の出来事と錯覚するくらい身近な感覚がよみがえるんです。
細かい心の動きを表現出来るということは、普段からそれを察知することが出来るということ。
しかも、それを映画としてかたちに出来る…改めて感銘を受けました✨
マイヤーウィッツ家の面々
一見クセがすごい!でも意外に…
この映画に出てくるマイヤーウィッツ家の方たちは皆、
個性豊か…いや性格強めというか…全員クセがすごい!
特に一家の父ハロルド・マイヤーウィッツは、自分の親だったら結構嫌かもと思うほどクセが強かったです。
思ったら突っ走っていくタイプだし、怒りっぽくて気難しいし、他の人を振り回すし…😓
特に次男マシューは、よくやってるなと思ってしまうほどでした。
また、異母兄だったり継母だったり、世代を渡ったステップファミリーなので、
それぞれの「母親・父親」に対する捉え方が違っていて、そこの折り合わせがまた大変。
しかし映画が進むにつれて、この捉え方の違い・事情・理由がだんだんと分かってくると、
「あれ?この家族意外に普通なのかも…?」と思えてくるんです。
私この映画を2回観たんですが、こういう視点を持って観ると、ガラッと印象が変わりました。
一番印象が変わった人は、長女ジーン。
この映画を2回観て特に印象が変わったのは、長女ジーンです。
おとなしい人なので、最初は「何を考えてるか分からない・他の人のことは興味ないタイプ」に見えたんですが、
違う視点から観ると「実は彼女が一番周りが見えている人なのかも」と感じました。
ある理由から、長男ダニーと次男マシューが他の人の車を壊すシーンがあるんですが、
そこでのジーンの反応がとても冷静且つ常識的でびっくりしました。
今まであまりしゃべる機会が無かったジーンが、
長男ダニーと次男マシューを冷静に諭しているシーンを見ていたら、
なんだかちょっと滑稽で面白くて、そこがまた「リアルな家族」という感じがして良かったです。
親と子は、別個体。
芸術家肌の人が多い中、次男マシューだけが…
クセがすごいけどなんだか気になるマイヤーウィッツ家。
映画全体を通して気になったのは「親と子は別個体でしょ?」ということでした。
●父ハロルドは彫刻家
●長男ダニーは元ピアノの先生
●ダニーの娘イライザは映画を学ぶ学生…など、マイヤーウィッツ家は芸術家肌な人が多い中、
次男マシューは自力で事業を開拓して会計士兼コンサルタントとしてLAでバリバリ働いていました。
(父ハロルドは「マシューは家族の中でただ一人お金を(より)稼げる(仕事をしている)」と言っていました)
父ハロルドと次男マシューの言い争い
そんな次男マシューが、父ハロルドと激しく言い争いになるシーンがあります。
次男マシューの事業について父ハロルドが
「私が悪い親なら、お前は成功出来ていないぞ」と言うんですが…
何それ😤!お父さんが育ててくれたからっていうのもゼロではないけど、マシューの成功はマシューが自分で勝ち取ったものでしょ😤?!自力で顧客をしっかり掴んでるってすごいことだよ😤親と子は別個体でしょ😤?!
(私も自分の親と似たような経験がなくはないので、思わず黒lenoreが出そうになりました…笑)
これだけではなく「父さんは、稼げる僕の仕事を認めてないんだ!」というマシューに対し、
ハロルドは「お金を稼ぐお前を、世間が認めてるじゃないか」とも言うんですけど…
違 う の 😤 !「世間で認められてるからいいじゃん」じゃないの😤!!お父さんに認められたいんだよマシューは!「親から離れた一個人として頑張ってるな」って!!もぉー分からないんだなー仕方ないけどー!😤😤
(ゴーイングマイウェイすぎる父ハロルドにイライラしてしまうlenoreなのでした…😅こう感じるってことは、私はこの辺りのシーンを子ども側の目線で観ていたのかな?)
家族愛・親子愛・家族皆で一緒に…というのは確かに大事だと思いますが、
「相手が自分の子でも/自分の親でも、この人は私とは別の人格を持ったいち個人だ」という感覚は
しっかり持っていないといけないなと再認識しました。
まとめ
映画中盤に一度、そして映画終盤でもう一度登場する「愛してる 許すよ 許して ありがとう さよなら」という言葉。
たった5つの単語ですが、この中に全てが詰まっています。
そして、これがまさに「親と子は別々の人であることを感謝をこめて伝える手段」にもなっています。
「家族って、そんなに良いもんでもないぞ」⇔「家族って、なんだかんだ良いかも」
家族について対極にある感情をそのまま描いている稀有な作品です。おすすめ。
作品詳細・登場人物解説
2017年の作品
原題:『The Meyerowitz Stories (New and Selected)』
監督・脚本…ノア・バームバック
↓この作品は登場人物が多い&関係が少し複雑なので、私なりの解説付きで書きます💁♀️↓
●ハロルド・マイヤーウィッツ (ダスティン・ホフマン)
…マイヤーウィッツ家の長。長男ダニー 長女ジーン 次男マシューの父。彫刻家。大学で教鞭をとっていた。今はもう教えていない。現在の彫刻制作状況はぼちぼち。かなり怒りっぽく気難しい。運転が下手。
●ダニ-・マイヤーウィッツ(アダム・サンドラー)
…ハロルドの長男。ジーンと母親が同じ。マシューとは異母兄弟。股関節を痛めている。過去にピアノ教師をしていたが、娘イライザが生まれて以後はかなり長い間主夫だった → その後離婚 → 一時的にハロルドが住む家に居候する。若干心理的にイライザに依存している=子離れしきっていない。父ハロルドまではいかないものの怒りの着火スピードが早い。運転が下手。
●ジーン・マイヤーウィッツ(エリザベス・マーヴェル)
…ハロルドの長女。ダニーと母親が同じ。マシューとは異母姉弟。ゼロックスで施設管理者として働いている。とつとつとしゃべるタイプで若干何を考えているか分からない系。
●マシュー・マイヤーウィッツ(ベン・スティラー)
…ハロルドの次男。ダニーとジーンとは母親が別。LAで会計士兼コンサルタントとして活躍している。妻とうまくいっていない。ダニーの娘イライザと仲が良い。
●モリーン(エマ・トンプソン)←他の映画でみるエマ・トンプソンと全く雰囲気が違うので途中まで気づかなかった!
…ハロルドの現在のパートナー。ダニ-&ジーン、マシューの母とは別の人。いつもアジアン雑貨店の店員さんみたいな格好をしている。お酒をよく飲むためかあまり呂律が回っていないような話し方。飲みすぎて人が変わってしまうので、ハロルドから注意されている。料理が下手。
●イライザ(グレイス・ヴァン・パタン)
…ダニーの娘。大学で映画を専攻する予定。入学間近。大学はハロルドが教鞭をとっていたのと同じ大学。自主的に映像制作をしているが、かなりHard-R=R指定な作品が多い(ジーン評)。離婚後のダニーを気にかけている。
●L・J・シャピロ(ジャド・ハーシュ)
…ハロルドと同時代同世代の彫刻家。現在も一線で活躍しており、MoMAで展覧会を開くほど。世渡りが上手い(ハロルド評)。
…他。
(参考:映画.com, Netflix作品ページ )
予告編
↑映画『マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)』予告編 ( Netflix Japan You Tube 公式チャンネルより)
読んでいただきありがとうございました🎥
2025年10月7日
Posted by lenore
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