映画『梅切らぬバカ』自閉症の子をもつ親なので…自分でも引くほど泣きました(T_T)

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梅切らぬバカ レビュー

こんにちは!lenoreです。

今回は映画『梅切らぬバカ』について書こうと思います。

 

自閉症をもつ50代の息子とその母の2人暮らしを描いたこの作品。

 

私自身、自閉症の子の母親なので、2021年の劇場公開時から気になっていたんですが、

塚地武雅さん?加賀まりこさん?絶対演技素晴らしいやん。

絶対感情移入するやん。ボロ泣きしそうやん。映画館からの帰り道困るやん😭

この理由から、観るなら家で・1人で・出来たら昼間に観られる時にしようと温存していました😂

(娘が寝てからの夜の時間帯だと、感情移入して泣いてしまった場合に気持ちが高ぶったまま寝られなくなっちゃうかもと思って昼間😌)

 

変にお涙頂戴にしようとせず、自閉症の方が生活の中に居る「日常」を真摯に描いている作品だなと感じました。



自閉症児の親として思ったこと

字として「自閉症」というのは同じでも、その方その方で違うので一概には言えませんが、

自閉症の娘の親として、映画全体を通して感じたことをいくつか書いてみようと思います。

 

悪いことは悪い。良いことは良い。

まず印象に残ったのは、誰かと何か事が起こった時に

「うちの子障害があって…」というような言葉を言う人が全く居なかったことです。

 

娘のヘルプマークの裏面には「こういう事情があって…」とか

「こういう理由でこういう動きをすることがあります」などを書いているんですが、

実際に娘が急に動き出して他の方にご迷惑を掛けそうになった時などは、

この映画の母・珠子やグループホームの方のように

私もまず「すみません」「ごめんなさい」を言うんです。

 

いろんなシチュエーションで頭を下げている珠子を見ると、共感して少し心が痛くなりつつも、

障害があるないに関わらず、本人がしたことは事実相手に困惑を与えているので、まず謝らないといけないよなぁと🤔



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映画の中で、自閉症の息子・山田忠男(通称ちゅうさん)が、

引っ越してきたばかりの隣の家の小学生・里村草太が落とした野球のボールを、

家まで届けに行くシーンがあります。

 

その時母の珠子は用事があって家におらず、ちゅうさんのみ。

ちゅうさんは1人で返しに行くんですが、たまたま玄関が開いていたので入ってっちゃうんですよね。

 

当然、草太の父・里村茂は「不法侵入だ!」と激昂。

そこへちょうど帰ってきた珠子は「すみません、すみません」と謝りながら

すごい勢いで押し出されてパニック気味になったちゅうさんを撫でて落ち着かせます。

 

その後草太の母・里村英子が茂をなだめ、皆で家に入ると…

そこに落ちていたのは、引っ越しの時に失くしてからずっと探していた草太の野球のボール。

「届けてくれたんだ…」とその時に気づきます

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私の娘を含め、自閉症の人って世の中で一般的に多く見られる反応をしないことがあります。

そこが特異に見えたり奇異に見えたりするかも知れないんですが、実はちゃんと理由があるんですよね。

 

何も感じないわけじゃない。何も出来ないわけじゃない。

常に周りの人に危害を加えようとしてる訳じゃない。

一般的に世の多くの方が思うように

「あ…あの人これ落としてった…気付いてないな…届けてあげよう」という感情が湧くんです。

 

ただ、その方法や手段をあまり知らなかったり

他の要因を考慮するというのが抜けやすかったりするので、

それを小さい頃から家族で・学校で・療育で・デイでちょっとずつ学んでいるんですよね。

 

「何か理由があるかもしれない」という考え方がもしあれば、

お互いの円と円がうまく重なりあう部分が増えるのかも…?と感じました。

(↑でもこの考え方って障害があるないに関わらず人付き合いで大事ですよね🤔)



廃品回収車の「かまいません」
【この段落以後、内容について言及があります】

50代になったちゅうさんと高齢の母・珠子。

見る方も見られる方も今までとは違った問題が出てきます(8050問題に近いですね)

 

以前から検討していたグループホームに空きが出たため、

将来のことを考え、珠子はちゅうさんにグループホームで他の人と一緒に暮らしてもらうことにするんですが…

あることが起こり、地域住民の反対もあって、ちゅうさんは「退去」となってしまいます。

 

その退去した帰り道。

珠子「せっかく広いお家に引っ越したのにねぇ…母さん居なくなったらちゅうさん一人ぼっちだ」

ちゅうさん「かまいません」

珠子「…かまいません…?」

こういうやりとりがあります。

 

これ、実はその時近くを走っていた廃品回収車から

「…壊れていても…かまいません…ご家庭内で不要になりました…テレビ…エアコン…冷蔵庫…」

と放送が流れていたんです。

 

ここすごく泣けました…本当に…😭

自分で引くくらい、自分でも止められないくらい泣きました😭

 

というのも、こういうくだりって娘との日常の中によくあるんです。

なにかのセリフや音声を絶妙なタイミングで言って(エコラリア含む)

それがあまりにもシチュエーションと合っていて笑えたり驚いたりすること。

 

でも、いつもならタイミングに驚くだけのことも、

グループホームを退去になった直後のつぶやきに対してってところが、

切なくもあり・悲しくもあり・でも自分の子どもが通常運転なのが分かって嬉しくなったり安心したり…😭✨

ここは自閉症をもつ方と日常的に接してる方じゃないと少しわかりにくいポイントかもしれないな…🤔



まとめ

どんな人間関係でも

グループホームの存続反対を訴えて、グループホームの真ん前でデモをしてた方たちの気持ちも分かるんです。

そりゃあ誰だって「静かに」暮らしたいですもん。

(何をもってして静かとするかというところではありますが)

 

私は、全部理解してほしいとか全部受け入れてほしいということは全く思いません。

ただ、理由も知らずに・相手の事情も経緯も何も聞かずに、地域を脅かす存在だ・害悪である・去るべきである…と判断するのは拙速ではないか?

この思いは拭えません。

そして、これは障害があるないに関わらず、どんな人間関係でも言えることだと思います。

(それをした上でも難しいなら一旦距離をおくというのは有り得ることだと思います)

 

映画タイトルの由来

この映画のタイトル『梅切らぬバカ』というのは「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」ということわざから来ています。

樹木の剪定には、それぞれの木の特性に従って対処する必要があるという戒め。 転じて、人との関わりにおいても、相手の性格や特徴を理解しようと向き合うことが大事であることを指す。

ーー映画『梅切らぬバカ』公式HPより

 

この映画の冒頭は梅の木を上から下へじっと映すシーンから始まり、

ラストの方には梅の木を下から上へじっと見上げていくシーンがあります。

 

私が知的障害を伴う自閉症の娘を育てている日々も、

彼女の動きを見て・彼女が何を見ているかを見て・彼女の表情を見てじっと観察して

そこから考えて思いついた事を、彼女の日々が少しでも生きやすくなるようにと試行錯誤する毎日です。

 

そんな彼女から教わることはとても多いです。そして大変なことも多いです。

と同時に、この映画に出てくるちゅうさんのように、グループホーム入居者の方の様に、

ユーモアに溢れた娘に元気をもらうこともたくさんあります。

 

実際のパートナーさんのお子さんが自閉症を持った方で、普段から接していらっしゃる加賀まりこさんの達観された演技。

真摯な気持ちで自閉症の方の動きを学んでくださったんだなと感じられる塚地武雅さんの素晴らしい演技。

この映画は多くのものを私に与えてくれました。本当にありがたいです✨

 

ただ…自閉症の方がいる究極の日常を描いたこの作品は、

刺さらない方には本当に刺さらない・刺さりにくいんじゃないかなと思います。

本当に日常で終わっていくので。

しいて言えば、そこだけがすごくもったいないかな…🤔

(私が見たレビューサイトの中で、いくつか「あそこの描写をそう感じる方もいらっしゃるのか…」と思うところがあって、私が自閉症児の母親だからこそ分かった・分かってしまったところがあるかも…と🤔)

 

でも、是非ぜひいろんな方に見ていただきたい。

そしていろんなことを感じる機会が、少しでも増えれば…と思えた作品でした。



作品詳細

Amazonプライムビデオ『梅切らぬバカ』

2021年の作品。

監督・脚本…和島香太郎

●山田珠子(自閉症の息子をもつ母)…加賀まりこ
●山田忠男(自閉症の男性。珠子の息子)…塚地武雅
●里村茂(珠子と忠男の隣の家に引っ越してきた。草太の父)…渡辺いっけい
●里村英子(珠子と忠男の隣の家に引っ越してきた。草太の母)…森口瑤子
●里村草太(珠子と忠男の隣の家に引っ越してきた。小学生。茂と英子の息子)…斎藤汰鷹
…他。

(参考:映画『梅切らぬバカ』公式サイト

予告編

(映画『梅切らぬバカ』予告編    U-NEXT公式You Tubeチャンネルより)

 

読んでいただきありがとうございました🎥

 



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Posted by lenore